人生、リハビリテーション!
何年か前、某テレビ企画(プロジェクト)に2回ほど参加しました。
1つは中卒の若者を集め、大学入学資格検定試験(大検)に合格させようという企画で、もう1つは町の荒くれ者を集めて大学へ合格させようという企画でした。超個性的な塾長が指揮をとり、その下で私は学習指導を担当しました。
その企画参加は私を大きく変えました。
参加した時は、テレビをほとんど見ず、企画のメインであるTOKIOさんすら知らなかったのですが、参加の後、TOKIOさんの大ファンになり、カラオケの十八番は「アンビシャス・ジャパン」になりました。
テレビだから、と言われたらそれまでですが、参加した連中は本物の、世間一般で言うところの『不良』たちでした。しかも、テレビ企画に採用されるような『不良』たちで普通の不良とは違う(?)のかもしれません。この番組に関し、よくインターネットの掲示板やらで「実は彼はマジメな…。」とか書いてありましたが、真っ赤な嘘です。
最初、参加した頃は本当にビビりました。いや、学生より塾長にビビッりました(笑)。
学生連中の方は、テレビ・スタッフから『勉強面では素直な連中』と聞いていたので、それほどでもなかったのですが、やはり最初はとっつきにくく、塾長とやりあう姿には、やはり怖いものがありました。
ところが、苦労しながらでも付き合って行くと、それぞれの個性(面白み)が見えてきます。未だに参加者たちの顔が焼きついています。無論、テレビの中ではほんの25分程度しか映しません。けど、そのウラでは数々のドラマがあったのです。そのドラマを共有し、私も進化しました。
俗にその番組は“ヤラセ”が有名(それも後から知ったのですが)で、参加中、周りからはそのことかり問われました。あの人は演技だだの、あの話は本当か、だの…。
ここでテレビ局側が主張する『演出』がどういうものなのか、ヤラセとはどんなものなのか、議論する気はありませんし、私の専門外と逃げておきますが、ただ1つだけ言えるのは、大検の不合格も、大学の合格も事実である、ということです。
この件に関しては誰にも譲れません。
2回目の大学合格を目指す企画でスポットをあてられた若者は、急に勉強心に目覚めた…、なんて話は全くありません。そんな話だったら、それこそヤラセでしょう。ただただ、誰もが『合格しなければならない』という状況に追いこまれていました。
…というのも、1回目のときもそうでしたが、テレビの流れ上、後に引けなくなってしまうのです。
啖呵切った以上、それなりの結果を出さなければ、というのです。
そういうときの彼等は本当にすごい!
参加した連中には大変申し訳ないですが、正直、学校の勉強については本当に何も知らない連中でした。塾長が散々おっしゃっていたとおり、本当に九九さえわからない連中でした。大学企画の方では、JFケネディが何をやった人物なのか、わからないレベルでした。
それを志望校1本で大学へ入れろだぁ?
けど、周りの不安など無視するかのように、番組でスポットをあてられた若者は、それで合格しました。
本当に合格しました。
参加した彼には本当に申し訳ありませんが、やはり不良だから(?)本当に馬鹿でした。
いや、根が素直でした。
こんなことを書くと意外かもしれませんが事実です。
素直だからドロップアウトしたのです。
普通の若者は、大人(社会)に騙されると仕方のないことと割り切ることができます。けど、根が素直な人間にはそれが許せません。当然反発します。それがグレるという反応になるか、ひきこもるという反応になるか、十人十色の反応を示すのです。暴走族で言うなら、最初のボタンの掛け違いは前者の理由でしょう。
いくら本人が「俺、デレたわけやけん」と言ってるとはいえ、(本当に失礼だが)本当に馬鹿でした。
けど、馬鹿だと自覚(?)しているからこそ必死に、素直に、真直ぐに、突き進んだのです。
英語担当が「明日までに500単語覚えろ。」と指示を出すと、彼は本気で覚えました。
次の日、目を輝かせて「テストして」と言ってきました。
無論、完璧に500覚えたわけではないし、指示した側は「無理だろう。」と意識しながら出しました。
けど、本当にやりました。
私が持った国語でも同じです。「これをヤレ。」「はい。」の返事でひたすら真直ぐに彼は走りました。
走っている最中、昼食にこっそり「頭脳パン」を食べて…。
彼は必死に照れ笑いをしながらそれを隠し、そして、彼は合格しました。
普通の汚れた若者ならどうでしょう。
『500単語覚えろ!』といわれればブー垂れて文句を言い、次の日までには決してやらず、言い訳ばかりして逃げるでしょう。本当は馬鹿なのに、本人は自分のことを馬鹿だと思っていない、だから平気で嘘を吐き、逃げても何ら恥ずかしいとは思わないのです。
言い方は悪いですが、テレビ企画の彼等は鉄砲玉と同じで、正確に狙いをつけ、引き金を引けばひたすら真直ぐ突き進み、正確に標的に命中する、命中、即ち合格です。それにテレビ局が非常に優秀な先生方を集め、その先生方が狙いを定め、後は暴走族たちが一目散に、真直ぐに走っていく…。
それに対し、普通の汚れた人間たちは安定装置の故障したロケットで、発射したが最後、どこへ飛んで行くか分からない。軌道が反れて(言い訳して)ばかりいます。だから、命中(合格)できない。いくら優秀な先生でもどうにもならない。
世のドロップアウトした連中、引きこもりの連中にも純粋な奴が大勢いるでしょう。
合格した彼らと同じ人間が大勢いるでしょう。
自分はダメな人間?
自分は馬鹿だから何もできない?
そんなことはありません。
人は、1人で悩んだり、照れ隠しで黙っていると思考が偏狭になり、物事に盲目になってしまいます。すると、すごく簡単なことが難しくなったり、知らないだけの話を大きく悩んだり、そんなことが多くなります。しかし、絶望なんて言葉はありません。
時間が人に平等に与えられている以上、可能性も無限大に与えられているのです。
2009年
須藤 道
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