召喚魔法 04
奇跡
真剣勝負の人と人の挟間に奇跡が生まれる。
そう。
真剣勝負のスポーツ選手同士が見せるファインプレーのように。
仕事だってそうだ。
真剣勝負の仕事をすれば、さまざまな奇跡が生まれる。
真剣勝負を始めた私に、奇跡が起こり始めた…。
エレクトリカル・バーン。
電気による熱傷(やけど)。
この火傷のたちの悪さは、普通の火傷が表面的な熱傷なのに対し、電流の流れた部分、つまり、体の中まで火傷を負うという点だ。その患者が救命救急に運ばれてきた。ICU(集中治療室)に入れたいとのこと。
救急隊員が到着し、その患者の搬送の手伝いをしに看護婦のUMさんと2人で救命救急センターへ行った。
行ってみると、すでに心肺停止。救急隊員が心臓マッサージをしている。パンパンに膨れ上がり、皮膚が崩壊している患者の顔…。普通なら直視できない!!左腕がもげている(看護婦が口にした表現)。
必死に蘇生を行っている。
UM 『スーさん!!!!』
私 『はい!! 地下ですか?表ですか?』
通常、救命救急に運ばれてきた患者をオペ室、ICUへ運ぶには、裏の地下通路を通って搬送する。しかし、一刻を争う時、一般客が出入りする通路を搬送する。
UM 『表!!』
すぐに走る!!
エレベーターホールでエレベーターを停める。
エレベーターは4台。うち2台が一般用。そして、もう2台が搬送用の大型エレベーター。ちょうど見舞い時、見舞いに訪れた一般客でごった返していた。そこで搬送用のエレベーターを呼び、停めておく。
私 『すみません。救急の患者さんが来ますので、一般の方はあちらをご利用ください。』
他、2台の小型エレベーターでは搬送能力に限界がある。中央病棟は12階建て。一般の見舞客も、搬送用の大型エレベーターを使う時がある。ベッドが丸々1台入る搬送用に乗れば、エレベーターホールで待つ見舞客のほとんどを搬送できる。
それでも救急患者優先。
なかなか来ないエレベーターにイライラし始める一般客。
その目の前で空のエレベーターを停めている私。
恨めしい目で私を見つめる見舞客たち…。 気まずい状態(爆)。
丁寧なおばさんが聞いてくる。
お 『こちらのエレベーターは?』
私 『すみません。今、救急の患者さんがいらっしゃいますので。』
こういう時に限って、なかなか来ない。
死んじゃった?
それでも、患者到着を待つ。見舞いに来た一般客が増えてきた。ザワザワとエレベーターを待つ見舞客。なかなか来ないエレベーターに、また、来ても乗り切れない小さなエレベーターにイライラし始める。
とうとう、1人のオッサンがブチ切れた。
オ 『誰も来ないじゃないかよ!!乗せろ!!』
無理やり乗ろうとしたオッサンを制止した。
その私の手を振り払い無理やり乗ろうとするオッサン!
こっちも切れた!
私 『人の命がかかってるんだ!!あんたらは向うを使え!!』
周りにいた見舞客も、おっさんに同情し、
周 『そんな言い方ないでしょう!!』
…みたいに私を非難し始め、おっさんとはつかみ合いの喧嘩になろうとした。
正にその時!!
…来た。
救急隊員が馬乗りに患者に跨り、必死に蘇生作業をしている。
氷を張った銀色のノウ盆には患者の左腕。
点滴をあてがい、口にマスクをはめて人工呼吸ポンプを握る主治医。複数の点滴を高く掲げ、ベッドに手をかけているUMさん、瀕死の患者に声をかける。
UM 『もうすぐですよ!!しっかりしてください!!』
顔面がパンパンに腫れ、直視できない状況の患者…。
まるで『13日の金曜日』のジェイソン状態。
その一団が、もうダッシュで走ってきた!
周りにいた見舞客が一瞬のうちに凍りつく!!
恐ろしいまでの静寂…。
即行でエレベーターに乗せると、UMさんが扉を閉めるボタンを押した。
UM 『スーさん、2階!!』
私 『了解!!』
すぐさま外から2階へ上がって受け入れ態勢を整えなければならない。
人混みをかき分け、エレベーターの裏にある階段へ走ろうとして立ち止まり、振り返る!
気をつけの姿勢で…、
私 『怒鳴ってすみませんでした!!!!』
深々と頭を下げ、辺りにいた見舞客たちに詫びる。
すると、また怒鳴られた。
オ 『馬鹿!!何してるんだ!!さっさと行け!!』
私 『すみません!!』
走り出し、階段を上る。
背中では
客 『頑張れよぉぉ!!!』
客 『頼んだぞぉぉぉ!!!』
拍手と歓声がわいた。
そんな声援を背にうけ、私は階段を駆け上った。
涙を流しながら…。
メモ 〜真剣勝負の証〜
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